国際安全保障論 1-2.戦争の原因 国際紛争のモデル

ここまでの議論は戦争ですね、戦争というのは政治行為であるという議論をしました。

ではなぜここでそのような戦争なんですけれども、それがなぜ起こるのかということをまず考えていく手立てとして、ここで一つ、ゲーム理論に基づくモデルというものを導入していきます。

いいですか、まず、ここで言うのはこれっていうのは国際紛争のバーゲニング・モデル、つまり交渉ですね。交渉問題であるというふうにとらえておいてのモデルとして考えます。

ここでは物事を非常に単純化するために、ええ、まあ実際の国際紛争というのは、あのさまざまに変わるわけなんですけれども さまざまに多様なあり方となるわけなんですけれども、これは個々のモデルというのは さまざまな事象に共通する根本的な問題となるもの抽出して単純なモデルとして、とらえることで何か根本的なことを理解できるのではないのかという営みなんですね。

でこれは国際政治の今、現在の理論研究の最前線でも、まずここから始まるという重要なモデルなので、しかし、これはあの難しくも何ともない単純なものなんで、これまず見ていきます。じゃあここで1つの単純化として何をするかというとまた国際紛争は二国家間ここでは、ひとつの国をS1(エスワン)ととらえるわけですね。S1(エスワン)とそれからS2(エスツー) と Sというのはステイト(State)のエスですね。でS1とS2というのが何かしらの紛争をかかえていると利害対立があるというふうにまず考えます。

で、もう少しこれは直観を育てるためにこの具体的な紛争の内容を領土紛争としてみましょう いいですね。領土紛争であれば何が問題なのかというと、これは国境線の現在の変更を巡って位置をめぐって対立している 利害が対立しているという意味での国際紛争と考えることができるんですね。

ではここで争点となっている その領土ですねそれを区間x(エックス)ですね、0(ゼロ)と1の間におさまる。えーまあ価値があるものとしてとらえます。でこの価値つまり1なんで、この争点となっている領土を全部、占有してしまえばそれは価値が1であるということで標準化してみましょう。
これを1とすることに特別な理由はないので 、まあ「1」ということにしとくと、単純化のために。そうするとじゃあこの現在の状況何かっていうと、現在の国境がこの争点となっている「0(ゼロ)」から「1」の間の間のどこか、どこでもいいんですけれども、ここq(キュー)にあるというふうに考えてみましょう。いいですか、じゃあ「q」があるのであれば、じゃあこれは何を意味するのかというとこのバーゲニングモデルでとらえるのは、この第一国、つまりS1(エスワン)ですね。S1が領有する領土っていうのは0とqの間という風に考えることができるわけなんですよね。

そうするとS2も第二国ですね。あのこの現在の領土、国境線qから得られる価値というものは、このqと1の間をS2の現在の利得というふうに考えることができるわけですね。それをまとめて書いたのがS1の現在の国境線から得られる利得っていうのはもう単純にqとなんでかっていうとこれq-0(キューひくゼロ)ですよね 。でqとじゃあ今度第二国の価値は、利得、現状の国境線から得られる利得は何かというとこれ1-q(イチマイナスキュー)が何かっていうと、この1からこっちのqの部分を解いた部分ですよね、つまりこの1-qっていうのがqから1の距離を測っているにすぎないと、そのようにこれはモデルを立てているわけですよね。でこのようなまず現状の定式化をまず確認すると、そうすると、今度クラウゼヴィッツがさっき話していた戦争っていうのは通常の政治過程の延長という話ですね。つまり戦争が始まるということはオプション1、つまり外交ということを先ほど話しましたけれども、オプション1からオプション2に 戦争ですね、に移行すると言うことなんですね もし戦争が起きるとすれば、どこかの最後の瞬間に必ず戦争を開始するという人がいるわけなんですよね。
であるならばその瞬間のその状況をとらえた、このものをこういうふうに表現することができるとつまり何かというと最後の瞬間においてはこのまま外交を続けていくのか、あるいは開戦にいくのかという決定をしなければいけないわけですよね。

ということはじゃあ戦争を行うことで何が得られうるのか。ということを政策決定者は考えるでしょう。あるいは考えるべきなんですね。

そうするとその戦争のオプションというものの利得ですね。評価ですね。先ほどのバーゲニングモデルにおくとどうなるかっていうと、このように置くことができると、つまりここで何を言ってるのかっていうと、もし戦争をするとすればS1は、ここの距離0からp-c1(ピーマイナスシーワン)この距離を得ると言うことからそれを戦争の期待利得っていうわけですね。

第一国の第二国は、第二国の戦争から得られる、期待できる利得は何かというと、この1からp+c2(ピープラスシーツー)という距離として表現できると。

じゃあこれはいったい何なのか どこから出て来たのかっていうと実は、これは非常に一般的な戦争がもし起きるとしたら、どうなるかということに関する理論的な形式化があるんですね。その一つであると何かというとまずS1の戦争オプション。期待利得というのを見てみましょう。
先ほどp-c1と言いました。それっていうのは何かというと、これっていうのは実はpかける、その領土全体についての評価値、つまり1ですね。1、pのそれからc1を引いたものであると第二国のS2についても同様で(1-p)に領土の評価値1をかけたところからc2を引いていると、これは何かということなんですけれどもこのpというのは実はもしS1が戦争を仕掛けたときに、あるいはS2でもいいんですけれどももし戦争が始まったときに最終的にS1が勝つ確率pとしてpを置いてるわけですね。
ただしこれ勝つ確率というふうに考えなくてもいいんです。なんでかっていうと現実の戦争っていうのは本当に勝ち負けが決まるまで、それを絶対戦争って言うんですけれども勝ち負けが決まるまで戦うわけじゃないんです。ほとんどの戦争は何かしらの停戦合意やそれに付随する政治的な解決によって終わるわけですね。

であるならばこれは国境紛争であればpというのはひとつの解釈として、これは戦争に勝つ確率であると同時に1というあの領土評価値がありましたけれど、その中でどの程度の部分を得られるのかという期待値として考えることができるんですね。でそうするとS1が勝つ確率としてp×1ですよね。あるいはS1が得られるだろう領土の配分ですね。というのでp×1。同様にpの割合で領土をS1が貰うのであれば戦争を戦った結果、S2にとってはその残り分、つまり1-pですよね。というそのポーションを比率で、えー、戦争の結果、領土を獲得し得ると新しい配分がありうるということなんですね。それにくわえて、じゃあ今度c1とc2は何かってことなんですけれども、それはそれぞれS1とS2が支払うべきコスト、つまり戦争コストなんですよね。戦争コストって言ったときには様々にあります。

さまざまな戦争コストってあるんですけれども、そこで重要なのは、やはり戦死の問題あるいは、この民間人の被害の問題、さらにその社会的なインフラストラクチャが破壊されてそこに残る、まあ社会的なコストを考えてもいいですし、あるいは公衆衛生が非常に悪化します。そこから戦争が終わった後に非常に長い間、人々の生活が苦しめられます。そう見ての戦争コストなんですね、ということはじゃあどういうことか。これ政策決定する人にとっては、どういうことかであれば、考えれば、これはまあ軍隊あるいは日本であれば自衛隊の隊員たちに政府が政治指導者が自らの生命を危険にさらして下さいということをお願いできるのかという意味での政治意思、覚悟なんですね。
あるいはそれまでしてそのような被害をこうむってまでも得るものがあるのかと、その非常にその戦争は最悪な事象と言いました。そのようなことを政治行為として行う覚悟があるのかということを、ここのS1というのは政策決定者の立場からすれば彼らにとっての政治覚悟、政治意思なんですねそれが戦争コストとして考えるられるわけです。それが1つの戦争のオプションで何がありうるのかって考えでした。ではそのもう1つのオプション、1つめは外交ではどうであるかと言うと外交交渉最後の例えば最後の段階での外交交渉、開戦までの外交交渉何が起きているのか何をすべきなのか実は、そういうことを考えると実はやっぱり考えなきゃいけないのはもし戦争を行ったときにこれぐらいの領土をもらえるということを、やはりここは精査して且つ戦場であり得る交渉を交渉テーブルに持ってきて、そこで戦争をもし行ったならばってことを外交官同士でシミュレートするという意味での外交交渉を行なうべきなんですよね。理想的には。であるならばそこで何が一つ見えてくるのかっていうと、もし戦争を行なえば、これはpという領土の配分がありうるだろうと、あるいは逆に絶対戦争がもし起こり得るのであれば例えば力の配分、軍事力の配分、あるいは国際情勢を見て、どの確率でS1は勝ち得るのか、S2は勝ち得るのかということを想定することは可能でしょうであるならば、もしそうであるならば外交交渉で戦争をシュミレートして、その結果だけを外交的に妥結していくと言うことはありえるわけですよね。でそのように考えるならば、そうするとS1の外交から得られる利得っていうのをこのpを起点として0からpそれから第二国、S2のあり得る利得としてはpから1という意味でそうすると外交交渉における利得、理想的な利得というのはS1にとってはp、S2にとっては1-pであるわけですよね。

でなんでこんなことを考えるのか 理想だって言ったんですけど、これは重要なポイントなんですね。どういうことか言うとこれ二つ、先ほどあの戦争がまあ通常の政治過程の延長であると。外交過程のまあ他の手段を用いた外交過程交渉の一部であるというふうに考えるのであればオプション1とオプション2っていう話をしましたであるならば戦争を通して決着したときには、S1は先ほどp-c1という話をしました。しかし第一国S1は、これ外交を通してもしその結果を、戦争をもししたとしたらという結果をあの実行していれば、pという利得を得ることができたはずですよね、じゃあ今度ひるがえってS2については何か戦争を通しては先ほど1-p-c2で話をしました。同様に外交を通してだと1-pです、じゃあこの比較をしてみると何が見えてくるのかと言うと結局は戦争というのは非常にコストのかかる政治過程であるとということが言えるわけなんですよね。

つまり戦争の一つの特徴、これはクラウゼヴィッツは特にあの、先ほど議論したひとつの定義には含まれていないことなんですけれどもただ彼が言うのは他の異なる手段なんですけれども他の異なる手段を用いると戦争というのは非常に損な手段であるとつまり双方にとってもコストがあるとつまりもう少し正確に言うとS1にとってはこれp-c1とpの差をとってみると結局は戦争コストはcなんですよね。それが戦争のコストであると、損失であるとS2にとっても同様であると1-p-c2というものを1-pというものと比べると、これcというコスト、戦争のコストですよねそういうものがあると、そうするとじゃあ戦争という社会的な現象を考えるときには、これは非常に非効率なつまりS1とS2の間の社会的な損失っていうものが必ずあり得るわけなんですよね。なんでそんなこと、こんな戦争をするのかっていう議論なんです。

1つの例として朝鮮戦争を考えてみましょう。これ戦争が始まる前、第二次世界大戦の後なんですけれども、まあここでは38度線ていう所で北朝鮮と韓国が勢力がここで仕切られていたと戦争が始まると何が起きたのかというと、まず北朝鮮が南に進行していくわけなんですけれどもすると赤で示した部分、これ北朝鮮が非常に韓国を南の方に追いやったわけですよね今の釜山のある部分ですよね。その後に今度はアメリカが介入してきたと特に今の新しい空港のある仁川(インチョン)ですよね。 仁川で上陸を受けて劇的なマッカーサーに劇的な上陸があった後に巻き返しを図って北朝鮮軍をあの中国もありますけれどもあのどんどん押しに追いやっていくと、こういう戦いであったと。しかし結局どうなったかというと現在のこの、結局、基本的には38度線で停戦合意が図られたと、これっていうのは戦争開始前とほとんどあまり変わらないと、しかしながらその過程において非常に大きな悲劇が起こっている。まあ人々が苦しめられたという戦死者も大勢でたと言うことですよね。じゃあなんでこんなことをやったのか、これは戦争前とあまり変わらない国境線ですよね。
これがひとつの戦争コストとして考えられると外交交渉によっても、これっていうのはできたのではないのか。言い換えれば戦争する前でもこれが実現できたっていう政治過程だったわけですよね。政治過程で得たものと戦争の結果得たもの、コストがかかって得たものが同じであるとそういう問題として戦争コストをここでは考えています。

バーゲニング:交渉、取引